「ジェリコって結局どんな兵器だったの?」「トニーが冒頭でデモをしていたあのミサイルは何?」――映画『アイアンマン』(2008年)を見返した人なら、一度は気になるはずだ。ジェリコはトニー・スタークがヒーローになる”前”の姿、つまり天才兵器開発者としてのトニーを象徴する存在であり、物語全体の引き金にもなっている重要な兵器だ。この記事では、ジェリコがどんな技術で、劇中でどんな役割を果たしたのかを、オバディア・ステインとの関係も含めて解説する。
結論から言うと、ジェリコはスターク・インダストリーズが開発した新型のクラスターミサイルで、トニーの発明である「リパルサー技術」を初めて実戦兵器に応用したものだ。この記事の内容はすべて映画『アイアンマン』(2008年)本編の描写に基づいている。
ジェリコとは何か
ジェリコは、スターク・インダストリーズの兵器ラインナップ「フリーダム・ライン」の目玉として開発された、多弾頭式のクラスターミサイルだ。トニーが後にアイアンマンのスーツで使用することになる「リパルサー技術」を初めて搭載した兵器システムでもあり、劇中の紹介では「クラウン・ジュエル(最高傑作)」と称されている。
名前の由来は劇中で明言されているわけではないが、実在するイスラエルの弾道ミサイル計画「ジェリコ」(1963年に開発契約が結ばれた兵器で、旧約聖書に登場する都市エリコにちなむ名称)と同名であり、実在の兵器名を意識したネーミングだと考えられる。ただしこれはあくまで名称の類似から推測できる背景であり、映画の中でこの由来自体が説明されるシーンはない。
ジェリコの特徴・仕組み
リパルサー技術を実戦投入した初の兵器
リパルサーは、後にアイアンマンのパワードスーツの手のひらや足裏に搭載される推進・攻撃兼用のエネルギー技術だ。ジェリコは、このリパルサー技術を大型兵器に転用して実戦投入した最初の事例という設定になっている。つまりジェリコは、アイアンマンのスーツと源流を同じくする兵器だといえる。リパルサー技術を搭載したアークリアクターの仕組みについては、以下の記事で詳しく解説している。
アイアンマンの胸の光る装置とは?アークリアクターの正体とシリーズでの変化まとめ
着弾時に多数の子ミサイルへ分裂するクラスター兵器
ジェリコは発射後、1発の本体ミサイルが空中で分離し、16発の子ミサイルとなって同時に着弾する設計になっている。劇中のデモンストレーションでは、山岳地帯に向けて発射されたジェリコが空中で分裂し、広範囲に強力な爆風と衝撃波をもたらす様子が描かれる。1発の発射で広範囲を制圧できる、まさに「一度使えば十分」な兵器として設計されている点が特徴だ。
映画本編でのジェリコ登場シーン
アフガニスタンでのデモンストレーション
物語冒頭、トニーはアフガニスタンの米軍基地バグラムを訪れ、米軍関係者を前にジェリコのデモンストレーションを行う。この場面でトニーが語る演説は、シリーズを象徴する名言としても知られている。
恐れられるのと、敬われるのと、どちらがいいと思う? 私は欲張りだから、その両方が欲しいね。……一度も使わない武器が最良の武器だと言うが、私はそうは思わない。一度使えば十分な武器こそが最良の武器だ。
トニー・スターク『アイアンマン』(2008年)
デモンストレーションでは実際にジェリコが山岳地帯に向けて発射され、その圧倒的な破壊力を見せつける。この時のトニーは、自分の発明が人を殺す道具として使われることへの後ろめたさを微塵も見せておらず、後の彼との対比として重要な場面になっている。
テン・リングスによる拉致と兵器の悪用
デモンストレーションを終えて基地へ帰る車列を、武装組織テン・リングスが襲撃。トニーは重傷を負ったうえで拉致され、洞窟に監禁される。テン・リングスのリーダー、ラザはトニーに対し、自分たちのためにジェリコを製造するよう要求する。トニーと、同じく捕らわれていた医師インセンはこれを拒み、代わりに武装強化スーツ「マーク1」を密かに開発して脱出を図ることになる。
この時テン・リングスが所持していた武器の中には、スターク・インダストリーズ製の兵器が数多く含まれていた。トニー本人はこの事実にショックを受けるが、実はこれは偶然ではなく、社内の何者かが横流ししていた結果だったことが後に判明する。
映画全体のあらすじを詳しく振り返りたい場合は、アイアンマン(1作目)のあらすじで解説している。
ジェリコとオバディア・ステインの関係
生還後のトニーが記者会見で追及されるのは、ジェリコをはじめとするスターク社製兵器が、なぜテン・リングスの手に渡っていたのかという点だ。記者クリスティン・エバーハートの取材によって、スターク社の兵器が正規の販売ルート以外にも流出していた疑惑が浮上する。
そして物語終盤で明らかになるのが、この横流しの黒幕がトニーの後見人的存在だったオバディア・ステインだったという事実だ。ステインは長年にわたり、スターク社の兵器(ジェリコを含む)をテン・リングスなどの武装勢力に不正に売却し、私腹を肥やしていた。トニーを拉致するようテン・リングスに仕向けたのもステインの指示であり、ジェリコの悪用は、ステインの裏切りという物語の核心につながる伏線になっている。ステインのその後の顛末やアイアン・モンガーとしての対決については、以下の記事で詳しく解説しているので、ジェリコの背景をより深く知りたい人はあわせて読んでほしい。
関連記事:アイアンマンのヴィラン(敵)歴代一覧|映画に登場した悪役まとめ
なお本記事はジェリコという兵器そのものに焦点を当てた解説であり、ステインというキャラクターの人物像や最期については上記の関連記事で扱っている。ここでは「ジェリコの不正流出がステインの裏切りを暴く引き金になった」という兵器側の役割にとどめておく。
ジェリコが象徴するもの
ジェリコは物語のごく序盤にしか登場しない兵器だが、その存在意義は大きい。「一度使えば十分な武器が最良」と豪語していたトニーが、自分の兵器が罪のない人々を傷つける道具として横流しされている現実を目の当たりにし、価値観を大きく転換させるきっかけになっているからだ。生還後のトニーは記者会見で、スターク・インダストリーズの兵器製造事業からの撤退を宣言する。ジェリコは、トニーが武器商人からヒーローへと変わる転換点を示す、いわば”変化前のトニー”を象徴する兵器だといえる。
ジェリコのデモンストレーションから拉致、そして兵器事業撤退宣言までの一連の流れをあらためて映像で確認したい人は、Disney+ (ディズニープラス)で『アイアンマン』(2008年)を視聴できる。
よくある質問
Q. ジェリコは実際にアイアンマンのスーツに使われた技術と同じですか?
A. 完全に同一ではないが、ジェリコに使われている「リパルサー技術」は、後にアイアンマンのスーツの推進・攻撃システムとしても使われる技術だ。ジェリコはこの技術を大型兵器として実用化した最初の例という位置づけになっている。
Q. ジェリコは続編の映画にも登場しますか?
A. ジェリコ自体は1作目『アイアンマン』の序盤だけに登場する兵器で、『アイアンマン2』『アイアンマン3』の本編には直接登場しない。物語上の役割は1作目のみで完結している。
Q. ジェリコという名前に元ネタはありますか?
A. 映画内で明言されているわけではないが、現実にも「ジェリコ」という名称の弾道ミサイル計画がイスラエルに存在する。旧約聖書に登場する都市エリコに由来する名称で、実在の兵器名を意識したネーミングと見られる。
まとめ:ジェリコはトニーの過去と決別を告げる兵器
ジェリコは、リパルサー技術を初めて実戦投入したスターク社製クラスターミサイルであり、アフガニスタンでのデモンストレーションからトニーの拉致、そしてオバディア・ステインの裏切り発覚へとつながる、物語序盤のすべての引き金になった兵器だ。派手な戦闘シーンこそないものの、トニー・スタークというキャラクターの出発点を理解するうえで欠かせない存在だといえる。
ジェリコが登場する冒頭シーンをもう一度見たい人は、Disney+ (ディズニープラス)で『アイアンマン』(2008年)をチェックしてみてほしい。



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