「あのスパイダーマンのエンディングで流れていた曲、なんて曲だっけ?」——シリーズが3つの実写ラインとアニメ版に枝分かれした今、主題歌を正しく思い出すのは意外と難しくなっています。
結論から言うと、スパイダーマン映画には「シリーズ共通の主題歌」は存在しません。サム・ライミ版はロックバンドの書き下ろし、アメイジング版はR&B/ヒップホップ、MCU版はスコア主体で主題歌シングルを立てない方針、アニメ版スパイダーバースはヒップホップのアルバム作品と、シリーズごとに音楽の設計思想がまったく違います。そして日本では、ほぼ全作品に「日本語吹替版主題歌」という独自の枠が用意されてきました。
この記事でわかること
- 歴代スパイダーマン映画の主題歌・代表曲を作品別に一覧で確認できる
- 各楽曲が本編のどの場面で使われ、どんな役割を果たしたかがわかる
- 最新作『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(2026)の主題歌事情がわかる
【一覧表】スパイダーマン映画の歴代主題歌・代表曲
まずは本国版(オリジナル版)で「主題歌」「サントラのリードシングル」として扱われた楽曲を作品順にまとめます。
| 作品名 | 公開年 | 楽曲名 | アーティスト |
|---|---|---|---|
| スパイダーマン | 2002 | Hero | Chad Kroeger feat. Josey Scott |
| スパイダーマン2 | 2004 | Vindicated | Dashboard Confessional |
| スパイダーマン3 | 2007 | Signal Fire | Snow Patrol |
| アメイジング・スパイダーマン | 2012 | ポップス主題歌なし(James Hornerのスコア中心) | James Horner |
| アメイジング・スパイダーマン2 | 2014 | It’s On Again | Alicia Keys feat. Kendrick Lamar |
| スパイダーマン:ホームカミング | 2017 | Blitzkrieg Bop(挿入歌) | Ramones |
| スパイダーマン:スパイダーバース | 2018 | Sunflower/What’s Up Danger | Post Malone & Swae Lee/Blackway & Black Caviar |
| スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム | 2019 | ポップス主題歌なし(スコア中心) | Michael Giacchino |
| スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム | 2021 | ポップス主題歌なし(スコア中心) | Michael Giacchino |
| スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース | 2023 | Calling | Metro Boomin, Swae Lee, NAV feat. A Boogie wit da Hoodie |
| スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ | 2026 | Suite New Day(サントラのリードシングル) | Michael Giacchino |
一方、日本では公開のたびに国内アーティストによる「日本語吹替版主題歌」が用意されてきました。こちらも一覧にしておきます。
| 作品名 | 公開年 | 楽曲名 | アーティスト |
|---|---|---|---|
| スパイダーマン2 | 2004 | Web of Night(English Version) | T.M.Revolution |
| アメイジング・スパイダーマン | 2012 | 0 GAME | SPYAIR |
| アメイジング・スパイダーマン2 | 2014 | Fighter | 中島美嘉×加藤ミリヤ |
| スパイダーマン:ホームカミング | 2017 | Never Say Never | 関ジャニ∞ |
| スパイダーマン:スパイダーバース | 2018 | P.S. RED I | TK from 凛として時雨 |
| スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム | 2019 | Neighbormind | 凛として時雨 |
| スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム | 2021 | Rosy | SixTONES |
| スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース | 2023 | REALiZE | LiSA |
| スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ | 2026 | Brand New | Mrs. GREEN APPLE |
シリーズ全体の並びを整理したい方は、スパイダーマン 見る順番 完全ガイドもあわせてどうぞ。
サム・ライミ版(2002〜2007):ポスト・グランジ全盛期のロック主題歌
ライミ三部作の主題歌は、いずれもエンドクレジットで流れる書き下ろしロックという共通フォーマットで作られています。スコアはDanny Elfman(3作目はChristopher Youngが参加)が担当し、劇伴とポップスの役割がはっきり分離しているのが特徴です。
『スパイダーマン』(2002):Chad Kroeger feat. Josey Scott「Hero」
初代の主題歌「Hero」は、しばしば「Nickelbackの曲」と紹介されますが、正確にはNickelbackのボーカルであるチャド・クルーガーのソロ名義で、Saliva(サライヴァ)のジョシー・スコットをフィーチャリングした楽曲です。バンド名義ではないため、検索でつまずきやすいポイントです。ブロードキャスト映画批評家協会賞やグラミー賞で楽曲賞にノミネートされました。
またサウンドトラックには、1967年のTVアニメ『スパイダーマン』主題歌(作詞:ポール・フランシス・ウェブスター/作曲:ロバート・ハリス)のエアロスミスによるカバーが収録され、本編ではエンドクレジットの最後にオリジナル音源が流れます。この「1967年テーマの引用」は、以降のシリーズでも繰り返される隠れた背骨になっていきます。1作目そのものについては初代『スパイダーマン』2002年版を解説で詳しく触れています。
『スパイダーマン2』(2004):Dashboard Confessional「Vindicated」
2作目の主題歌はエモ/アコースティック系バンド、ダッシュボード・コンフェッショナルの「Vindicated」。2004年5月31日にサントラのリードシングルとして発売され、本編ではエンドクレジットに使用されました。フロントマンのクリス・キャラバは特別試写で本編を観たあと、わずか10分で書き上げたと語っています。ピーターが力を失い、それでも立ち上がるという2作目のテーマを、そのまま曲の骨格に移し替えた形です。
日本版主題歌はT.M.Revolutionの「Web of Night」。本作のために書き下ろされ、映画のサントラには全編英語詞のEnglish Versionが収録されました。オリコン週間5位を記録し、T.M.Revolution本人はアメリカで行われたワールドプレミアに紋付袴でレッドカーペットに登場しています。なお本編中では、マイケル・ブーブレによる1967年テーマのカバーも使われています。
『スパイダーマン3』(2007):Snow Patrol「Signal Fire」
3作目の主題歌は北アイルランド出身のバンド、スノウ・パトロールの「Signal Fire」で、サウンドトラックから唯一シングルカットされた楽曲です。イギリスではクモの巣型の特殊ヴァイナルで発売され、全英4位という同バンド最大のヒットを記録しました。ヴェノム、サンドマン、ハリーと三つ巴の物語に対して、主題歌側はあえて壮大なラブソング寄りに振り切っているのが面白いところです。
アメイジング版(2012・2014):主題歌の有無が分かれた2作
アンドリュー・ガーフィールド版は、2作で音楽の方針が大きく変わりました。
『アメイジング・スパイダーマン』(2012)は、故ジェームズ・ホーナーによるスコア中心の構成で、本国版にはポップスの主題歌シングルが立てられていません。ホーナーのスコアは壮大さと親密さを併せ持つと評され、アクションよりもピーターと周囲の人間関係に寄り添う設計でした。一方、日本版テーマソングにはSPYAIRの「0 GAME」が起用されています。この曲は元々SPYAIRのオリジナル曲で、バンド側からの熱望を受けて制作陣が採用したという経緯があり、「日本版主題歌だけ存在する作品」という珍しいケースになりました。
『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)では一転して主題歌が復活します。アリシア・キーズがケンドリック・ラマーを迎えた「It’s On Again」で、2014年3月31日にサントラのリードシングルとしてリリース。作曲にはスコアを手がけたハンス・ジマーとファレル・ウィリアムスも参加しており、本編ではラストを締めくくる楽曲として流れます。日本語吹替版テーマソングは中島美嘉と加藤ミリヤによるスペシャルユニットの「Fighter」で、m-floのTakuがプロデュースを担当しました。
MCU版(2017〜2021):主題歌を立てず「1967年テーマ」を武器にした3部作
トム・ホランド版MCU三部作の最大の特徴は、本国版で歌モノの主題歌シングルを一切立てていないことです。全3作の音楽をマイケル・ジアッキーノが担当し、代わりに強烈な引用として使われたのが1967年アニメ版のテーマでした。
『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)では、冒頭のマーベル・スタジオのロゴに合わせて1967年テーマのオーケストラアレンジが鳴り響きます。ロゴにキャラクターのテーマを重ねる演出はMCUでも異例で、「ソニーとマーベルの共同製作」という本作の立ち位置を音で宣言する仕掛けでもありました。挿入歌ではラモーンズの「Blitzkrieg Bop」が、街を駆け抜けるシーンとエンドクレジットで使われています。日本語吹替版主題歌は関ジャニ∞の「Never Say Never」で、安田章大が作詞・作曲を手がけました。
『ファー・フロム・ホーム』(2019)はジアッキーノのスコアで統一され、日本語吹替版主題歌に凛として時雨の書き下ろし曲「Neighbormind」が起用されました。続く『ノー・ウェイ・ホーム』(2021)も本国版にリードシングルはなく、歴代スパイダーマン集結という物語の重みをスコアで支える構成です。日本語吹替版主題歌はSixTONESの書き下ろし新曲「Rosy」で、2ndアルバム『CITY』にも収録されました。
アニメ版スパイダーバース:サントラが作品評価そのものを押し上げた
スパイダーバース2部作は、音楽が「添え物」ではなく作品評価の中核を担った点で、他のシリーズと決定的に異なります。
『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)
ポスト・マローンとスウェイ・リーによる「Sunflower」は、2018年10月18日にリリースされBillboard Hot 100で1位を獲得。トップ10圏内に33週間とどまる当時の記録タイ、全米3×プラチナという、映画音楽の枠を超えたヒットになりました。第62回グラミー賞では最優秀レコード賞にノミネートされています。
もう1曲の要が、Blackway & Black Caviarの「What’s Up Danger」です。マイルスがビルから逆さまに落ちていく、シリーズ屈指の名場面「リープ・オブ・フェイス」で、ダニエル・ペンバートンのオーケストラスコアと曲が継ぎ目なく溶け合っていく構成が高く評価されました。ここでは主題歌が「エンドクレジットで流れるおまけ」ではなく、キャラクターが覚悟を決める瞬間そのものを設計する装置として機能しています。サウンドトラックはBillboard 200で2位、AllMusicは5点満点中4点をつけ、ヒップホップ系の映画サントラとして屈指の完成度と評されました。
ちなみに本編冒頭、ピーターの自己紹介で「アニメの主題歌は最高!」と語られる場面とエピローグでは、例の1967年テーマのオリジナル音源が流れます。日本語吹替版主題歌はTK from 凛として時雨の「P.S. RED I」でした。
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023)
続編ではプロデューサーのメトロ・ブーミンがサウンドトラック全体を統括し、アルバム『Metro Boomin Presents Spider-Man: Across the Spider-Verse』として制作されました。リードシングルは2023年5月31日配信の「Calling」(Metro Boomin, Swae Lee, NAV feat. A Boogie wit da Hoodie)。スコア側からもダニエル・ペンバートンの「My Name Is… Miles Morales」が先行配信され、パンクロックから電子ループ、インド楽器まで飲み込んだ音作りが話題になりました。Billboardは同作を2023年のベストアルバム43位に選出しています。日本語吹替版主題歌はLiSAの「REALiZE」で、LiSAにとって初のハリウッド映画主題歌となりました。
アニメ版の鑑賞順を確認したい方は『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズを見る順番もどうぞ。
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(2026)の主題歌
最新作の音楽はマイケル・ジアッキーノが続投し、サウンドトラックはソニー・クラシカルから2026年7月31日にリリースされました。リードシングルは7月16日に先行配信された組曲「Suite New Day」です。MCU三部作と同様、本国版では歌モノの主題歌シングルを立てない方針が踏襲されています。
ジアッキーノは、これまで築いてきたMCUスパイダーマンのテーマから意図的に特定の音符を抜き取って本作のスコアを構成したと語っています。ピーターが失ってしまったものを、旋律から音を削ることで表現したという趣旨です。主題歌そのものより、この「引き算のスコア」が本作の音楽的な核と言えます。
日本版主題歌はMrs. GREEN APPLE「Brand New」
日本語吹替版のエンドクレジットには、Mrs. GREEN APPLEの「Brand New」が使用されています。大森元貴が本作のために書き下ろした楽曲で、マーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギ本人による動画で発表されました。ファイギがバンドのファンで、直接コンタクトを取ったことが起用のきっかけと報じられています。さらに同曲は全世界のUGC(ユーザー生成コンテンツ)ソングにも選定され、日本版主題歌が世界規模で展開される異例のケースとなりました。バンドはロサンゼルスで行われたワールドプレミアのレッドカーペットにも登場しています。
本編を彩る挿入歌
サウンドトラックには、ジアッキーノのスコアに加えて既存曲も多数使われています。主なものは次のとおりです。
- Tame Impala「Loser」
- Bad Bunny「Eoo」
- Steve Lacy「Oh Yeah?」
- TV on the Radio「Wolf Like Me」
- Chaka Khan「I’m Every Woman」
- Cannons「Fire for You」
- Brian Eno「St. Elmo’s Fire」
そして本作でも1967年アニメ版のテーマは健在で、ネッド・リーズが開発したアプリのBGMという形でさりげなく登場します。24年前の1作目から一貫して受け継がれてきた仕掛けです。作品の詳細は『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』最新情報まとめで解説しています。
まとめ
- シリーズ共通の主題歌はなく、実写ライン・アニメ版でそれぞれ音楽の方針が異なる
- ライミ版は「Hero」「Vindicated」「Signal Fire」と、エンドクレジットの書き下ろしロックで統一
- 「Hero」はNickelback名義ではなく、ボーカルのChad Kroegerのソロ名義(feat. Josey Scott)
- アメイジング版は1作目に本国版主題歌がなく、2作目でAlicia Keys feat. Kendrick Lamar「It’s On Again」が起用された
- MCU三部作は主題歌シングルを立てず、Michael Giacchinoのスコアと1967年アニメ版テーマの引用で勝負した
- スパイダーバースは「Sunflower」の全米1位、「What’s Up Danger」の名場面との一体化で、音楽が作品評価を押し上げた
- 最新作『ブランド・ニュー・デイ』はジアッキーノ続投、リードシングルは「Suite New Day」、日本版主題歌はMrs. GREEN APPLE「Brand New」
1967年のアニメ主題歌が20年以上にわたって全シリーズに顔を出し続けている——この一点を知っているだけで、次の再鑑賞の解像度はかなり変わるはずです。



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